【うつわのお手入れ】木製品編

素材・種類別に解説。木製品の取り扱い上注意とお手入れ方法について

「木製品は生きもの」とよく言われますが、その言葉通り、加工された後もまるで呼吸するかのように湿度を吸収・放湿する特徴をもつのが木製品です。木製品の基本的な情報や取り扱いの注意点、そしてお手入れ方法をご紹介します。

 

日々の暮らしになじみの深い、「木製品の種類」について

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食器やトレイなど、暮らしになじみの深い「木製品」には以下のような種類があります。

 

曲げ物

薄く削った板を曲げて作る、円筒形の工芸品です。弁当箱やお盆、おひつ、菓子器などがあります。

 

指し物

釘を使わず、木の組み合わせだけで作る工芸品です。角型の容器やコースター、トレイなどがあります。

 

刳り物(くりもの)

一枚板をカンナやノミで削って仕上げる工芸品です。全て手彫りで作るためサイズの自由度が高く、装飾性の高い器や日用品が作られています。

挽き物

ろくろや施盤など回転する道具を使って、板を丸く削り加工した器です。お椀や盆など丸い器が中心です。

 

素材の違いでお手入れも変わる?「木の種類」について

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木製品に使われる木の種類もさまざま。それぞれに特徴があり、お手入れ方法も変わります。

ヒノキ

良い香りがする高級材として知られるヒノキ。抗菌・防虫作用があることから弁当箱、まな板やしゃもじなどの台所用具によく使われます。また香りを楽しむため酒器に使われることも。

汚れ・水に強く、木の中では比較的お手入れに手間がかかりません。木の切断面(木口)だけは水が浸透しやすくカビが生えやすいため、お手入れには注意しましょう。

杉は軽くて加工しやすく短期間で成長するため、江戸時代から広く日用品に使用されてきました。香りが良く弁当箱や酒器によく使われます。また杉の桶や樽も有名です。

杉は吸水性が高いため、中に入れた食べものや飲み物の水分・匂いをよく吸収します。使う前に軽く水にくぐらせ、拭いてから使用すると、水分や匂い移りを防ぎやすくなります。

 

さわら

ヒノキによく似た木材ですが、強い芳香はありません。水分や湿気に強いため桶や柄杓、おひつなどによく使われます。

さわらは樹脂(ヤニ)を多く含んでいるため、使う前にアク抜きが必要。使う前は器に米のとぎ汁を入れて一晩放置し、よく洗ってから使用しましょう。また酢やアルコールで気になるヤニをふき取るのもおすすめです。

 

木製品の取り扱い上の注意

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材質により細かな違いはありますが、木は乾いた状態だと水分や湿気を吸い込みやすく、食べ物のこびりつき・匂い移りがしやすくなります。使用前は軽く水通しし、水気を拭いてから使用しましょう。

また使った後は良く洗い、風通りの良い場所で乾燥させます。水分や湿気が残っているとカビ・黒ずみの原因になるため、しっかり乾燥させましょう。

また水に長時間つけ置くと、水分過多になり反りや割れが起こる可能性も。木は過度な乾燥・湿気に弱いため、温度や湿度変化の少ない場所で保管してください。

 

木製品の日常のお手入れについて

木製品は無塗装か塗装かで洗い方が変わります。

無塗装・塗装の木製品・洗い方の違い

無塗装の木製品は極端に汚れていない限り、洗剤を使用しません。無塗装の木は洗剤が染み込みやすく、自然の塗膜・樹脂を洗剤が洗い流してしまうため「水洗い」しましょう。

オイルやウレタン、漆などで塗装された木製品は他の食器と同様、やわらかいスポンジと中性洗剤で洗えます。

 

カビや黒ずみが気になったら

木製品は使い続けるとカビや黒ずみ汚れが気になることも。

カビは中性洗剤とやわらかいスポンジで洗うか、ブラシをかければ落ちる場合があります。ただし化学反応による変色・黒ずみや、深く根が入ったカビは容易に落ちないことも。

無塗装の木製品なら紙ヤスリで表面を磨き、汚れを落とせる場合もありますが、塗装製品は塗り直しが必要なケースがあります。購入元に相談してみましょう。

 

【オイル仕上げの木製品】お手入れのコツ

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オイルで仕上げた木製品は、定期的にオイルを含ませた布で器を磨いてメンテナンスします。

オイルはクルミ油やアマニ油、エゴマ油を使用するのがおすすめですが、大豆油や米油、グレープシードオイルなどでも代用できます。

時が経つほどに色合い・風合いを変え、日々の暮らしにそっとなじんでいく木製品。お手入れには気を遣いますが、手間暇かかるからこそ愛着もわいてきます。ぜひ共に過ごした時間を愛おしむ気持ちで、お手入れしてみてください。

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【うつわのお手入れ】金継ぎ編

独学派?教室派?金継ぎ初心者におすすめしたい「金継ぎのはじめかた」

大切な人にいただいた器をうっかり壊してしまった……。そんなときに伝統的な器の修復法「金継ぎ」を知っていれば、落胆する気持ちも少し和らぎそうですよね。金継ぎの歴史や成り立ち、また初心者の金継ぎのはじめ方などご紹介いたします。

改めて振り返ってみる。「金継ぎ」の歴史や成り立ち

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「金継ぎ」は割れた器のかけらやヒビなど、破損した部分を漆で接着し、その上から金粉や銀粉など金属粉で破損した箇所を装飾する技法です。

漆をつかって器を修復する方法は、古くは縄文時代から行われてきました。現代のように金継ぎに人々が芸術性を見出すようになったのは、茶の湯文化が発達し「わび・さび」に美を見出すようになった室町時代からだと言われています。

金継ぎに必要な道具は?方法は?

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金継ぎに必要な道具と材料

金継ぎに必要な材料はうつわと漆、小麦粉、木粉、砥の粉(地の粉)、金属粉の6つ。また使用する道具はマスキングテープ、ヘラ、筆、ヤスリ、カッター、作業用の板とゴム手袋、掃除用のオイルなどです。教える人によって必要な材料や道具は異なるため適宜用意しましょう。

金継ぎの大まかな流れ

金継ぎは大まかに下記の流れで行います。

  1. 割れを修復する場合は漆と小麦粉、水を混ぜて漆の接着剤をつくります。小さな欠けや、凸凹を修復する場合は、漆の接着剤に木粉や砥の粉(地の粉)を混ぜてパテを作ります。
  2. 器の割れた部分にそってマスキングテープを貼り、接着剤がはみでないよう下処理します。
  3. 漆で作った接着剤、あるいはパテを修復部分にヘラで塗り接着します。表面をヘラやカッターで削って整えます。
  4. 接着した器を乾燥させます。乾燥してから再度表面をヤスリで削って美しく加工します。
  5. 仕上げに修復した場所に筆で漆を塗り、金属粉を撒きます。
  6. しっかり乾燥させ、表面を磨きます。

作業自体は簡単ですが漆は温度や湿度に左右されやすいため、乾かす時間の調整や、乾かす場所の温度・湿度調整に手間暇がかかるため注意しましょう。

金継ぎのちょっとしたコツと注意点

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漆は厚く塗ると、乾くのに時間がかかります。また乾燥させる時期は、からっと乾燥した冬より、むしろ湿度と温度の高い梅雨時期や夏場の方が乾燥しやすくなります。

乾燥のちょうどいい塩梅や材料のそろえ方、道具の使い方などはプロの意見を聞くのが無難です。初心者向けの金継ぎ教室やワークショップなどが各地で開催されているため、通いやすいところを選び訪れてみてください。

初心者におすすめ!代表的な金継ぎ教室

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漆芸舎平安堂の金継ぎ教室

40年以上にわたって寺社、仏像、陶磁器などの修復に携わってきた、漆芸修復士・清川廣樹氏が開いた教室です。教室は東京と京都の二カ所。プロの指導による本格的な金継ぎの技術や、それを育んできた日本文化までを学べます。日程や滞在時間など、利用者都合によってスケジュールや値段が変わるため、まずは相談してみましょう。

NHK文化センターの金継ぎ教室

NHK文化センターは全国に44の教室をもつカルチャーセンターです。金継ぎ教室も北は北海道から、南は福岡まで全国各地で開催されています。初心者向けから講師養成コースまで、幅広い講義が行われているため、最寄りの場所で「初心者向け」の講座が開かれていないか確認してみましょう。

独学派に。通販で購入できる「金継ぎキット」

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独学ではじめるなら「金継ぎキット」を購入する方法もあります。金継ぎキットは東急ハンズでも販売されていますが、東急ハンズのネットストア、Amazon、楽天市場などの通販サイトでも販売されています。初心者向けの金継ぎ教本と合わせて利用してみてください。

最後に

ひとくちに「金継ぎ」といっても手法はさまざま。教える人によって道具や工程が変わり、混乱することもあります。ただ大事なのは「大切な器を直し、使い続けること」。手法にこだわらずに習いやすい場所や道具を選んで、まずは金継ぎをはじめてみませんか?

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【うつわのお手入れ】磁器編

磁器と陶器、お手入れに違いはある? 代表的な磁器の「お手入れ」のコツ

ひとめぼれで磁器を購入し、「そういえばお手入れの方法を知らない!」と戸惑ったことはありませんか? そもそも磁器と陶器はどう違うのでしょうか。材質や作り方、代表的な磁器の種類など基本を知り、コツを押さえて上手にお手入れしてみましょう。

磁器と陶器の違いとは?(材質・作り方について)

陶器の材質・作り方

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粘土を原材料に、磁器より低い温度(9001,200度程度)で焼きあげるのが陶器です。磁器との大きいな違いは原材料に含まれた、ガラス質の量。

陶器に使用する土はガラス質が少なく、低温で焼き上げるためガラス質と土との結びつきが弱く、穴も多いため吸水性がよい特徴があります。そのため釉薬のひび(貫入)から生地に水分や油分がしみこんだり、カビが付着したりすることも。

そのため陶器は使用する前に、生地にはいった穴や釉薬のひびをお米や片栗粉に含まれている「でんぷん」で埋める、目止めと呼ばれる作業を行います。磁器の場合、ひびや穴が少ないため目止めは行いません。

磁器の材質・作り方

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ガラス質が多い粘土を使用し、陶器よりも高温(1,2001,400度程度)で焼きあげるのが磁器です。生地に含まれているガラス質と土との結びつきが強いため、丈夫で焼きあがりもつるつるした仕上がりです。

陶器よりも生地にできる穴が少ないため吸水性がありません。また鉄分の少ない粘土を使用し、空気の少ない炎で焼きあげるため、生地が陶器のように黄色っぽくならずに透明感のある白色になります。

代表的な磁器の種類と産地

有田焼(伊万里焼)

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佐賀県有田町中心で作られている磁器を総称して「有田焼」と言います(※伊万里焼と言う場合も)。佐賀県有田町は日本で初めて磁器が作られた場所。日本の磁器の中で最も古い歴史をもっています。

九谷焼

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九谷焼は石川県南部を中心に作られている磁器。色彩の豊かさと優美な絵柄が特徴です。有田焼が作られ始めた頃と同時期に作られていたものを古九谷、それ以降に作られたものを九谷焼と言います。

磁器の安全な使い方と、使用時の注意点

磁器は陶器よりも硬く吸水性も少ないため、お手入れに手間がかかりません。陶器のように目止めする必要もなく、使い始めはやわらかい布で拭くか、スポンジと中性洗剤で洗うだけで使うことができます。

ただし磁器は豪華な絵付けがされている器も多く、金彩・銀彩などが施されている場合は手荒く扱うと色落ちしたり、電子レンジを使用することで発火したりする危険性も。また酸性の食品をのせることで絵付部分が変色することがあるため注意しましょう。

磁器の「お手入れ」のコツ

磁器は陶器よりも硬くて薄い分、衝撃によって欠けやすい一面があります。そのため洗うときは食器洗浄機を使用するのではなく「手洗い」するのがポイント。

また硬いスポンジやたわしで洗うと表面に傷をつけやすくなるため、やわらかいスポンジを使って洗いましょう。洗ったあとはしっかりと乾燥させ、湿度の少ない涼しい場所で保管します。

困ったときは?お手入れ対処法

しっかりと乾燥させないまま湿気の多い場所で磁器を保管すると、カビがついてしまったり、匂いがついてとれなくなったりすることがあります。

カビや匂いが付着したときは、まずは洗剤で落ちるかどうか確認しましょう。シンプルな磁器なら、漂白剤に浸してからお湯で洗い流せば、カビや匂いをすっきりと落とせます。(※金彩・銀彩・色絵が施された磁器の漂白剤使用はおすすめできません)

最後に

扱いやすく日々のお手入れも簡単な磁器ですが、雑に扱うと割れやすく、欠けやすい一面もあります。そのため長く愛用するなら、日々のお手入れと大切に使う気持ちが何より大事。「うっかり」に気をつけて、日々大切に取り扱うようにしましょう。

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【うつわのお手入れ】漆器編

漆器のお手入れに困った時の「QA」。傷むとかぶれる?匂い対策は?

温度・湿度に左右されやすい性質をもつ「漆」を使用しているからこそ、日々の取り扱いや傷んだ時にも何かと気を遣いそうな漆器。ただし基本を知れば、そんな心配は無用かもしれません。漆器のお手入れ方法やメンテナンス方法についてご紹介します。

「漆器」とは?漆器の材質・なりたち・代表的な種類

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漆を使用した工芸技術は、遡ること縄文時代から始まり、その後日本では全国あらゆる地で様々な漆工芸品が作られ各地の郷土産業として発展してきました。

漆器は漆塗りを施した器のことで、器に使われる材質は木が中心ですが、竹や紙、麻布や紙、陶磁器や金属、樹脂などが使われることもあります。

漆器は全国各地で作られているため様々な種類がありますが、代表的な種類としては石川県の「輪島塗」、青森県の「津軽塗」、福島県の「会津塗」、富山県の「高岡漆器」などがあります。

漆器のお手入れ基本(洗い方や保管方法)

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漆器は温度や湿度に左右されやすい「漆」を使用していますが、塗膜を傷つけないようにやさしく洗えば、特別なお手入れはさほど必要ありません。

洗い方は中性洗剤を水かぬるま湯に溶かし、やわらかいスポンジで洗うだけ。洗った後は水気を切ってから、布巾で表面についた水分を拭き取ります。

ちなみに高温・乾燥にさらされる食器洗浄機や乾燥機を使用して洗うと、漆器が傷みやすくなります。

漆は乾燥に弱く、湿度の高い環境で強くなる性質があります。自然乾燥させた後は食器棚にしまいっぱなしにせず「毎日使う」「毎日洗う」のが、何よりのお手入れです。ぜひ日々の食卓に漆器を取り入れて、漆器を水分にさらすようにしてみてください。

使いやすくメンテナンスしやすい、漆器を選ぶには?

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漆器には蒔絵を施した豪華なものもありますが、蒔絵は使い込むほどに変色したりはげやすかったりするため、毎日使うなら装飾のないシンプルな漆塗りの食器がおすすめです。

また表面には使い続けるほどつやが増し、丈夫で扱いやすくなる「天然漆」を使用したものを。素地には割れにくく、漆の密着度が高い「木」を使用している漆器を選ぶと長持ちしやすくなります。

臭い・カビ・くもりが気になった時の「QA

Q.「使い始めになんだか匂いがする……どうやったら匂いがとれる?」

A.漆器の使い始めは天然漆特有の匂いがすることがあります。匂いが気になる場合は、一晩、米のとぎ汁に器をつけおきしましょう。その後ぬるま湯で洗い、23日風通しを行えば匂いが抜けやすくなります。

Q.「カビが生えてしまった!お手入れはどうすれば?」

A.カビが生えてしまった場合は、まずはいつも通り中性洗剤とやわらかいスポンジで落ちるかどうか試してください。もしもとれない場合は、表面の漆がはげてカビの根が深く入り込んでいる恐れがあるため、表面の塗り直しが必要です。

Q.「長年使い続ける内につやがなくなった……漆器についたくもりはとれる?」

A.漆器は使いこむほどにつやが出てくる特徴がありますが、汚れがとりきれていない場合、逆に表面がくもることもあります。漆器のくもりはガラスの汚れを拭き取るように、息をふきかけ、やわらかい布で乾拭きすると落ちやすくなります。

また毎日さっと洗うだけで済ませているなら、少し丁寧に洗うだけでもくもりにくくなります。油のしみが原因のくもりなら、少量のオイルをしみこませた布で表面を磨いてみるのもおすすめです。

日々のお手入れやメンテナンスの「コツ」

手荒に扱わなければ長持ちする漆器ですが、高温にさらすと変色することもあります。熱湯や揚げものなど熱いものを入れる時は、使用前にぬるま湯にさらし、急激な温度変化を避けるのがおすすめです。

また漆は乾燥に弱い特徴があるため、どうしても長期間保管しなければならない時は、漆器とともに水を入れたコップを入れて保管するのがおすすめです。

さらに堅い陶磁器と重ねて食器棚へしまうと漆器が傷つきやすくなります。食器棚では漆器だけを保管するスペースを作ってしまうようにしましょう。

最後に

基本を知れば、意外と扱いやすいことがわかる「漆器」。扱いにくいからと敬遠することはありません。ただし「丈夫だから」と過信しすぎるのも禁物です。ぜひ漆器の材質と特徴・お手入れ方法の違いを知り、日々の暮らしに上手に漆器を取り入れてみてください。

 

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