漆器のお手入れに困った時の「Q&A」。傷むとかぶれる?匂い対策は?
温度・湿度に左右されやすい性質をもつ「漆」を使用しているからこそ、日々の取り扱いや傷んだ時にも何かと気を遣いそうな漆器。ただし基本を知れば、そんな心配は無用かもしれません。漆器のお手入れ方法やメンテナンス方法についてご紹介します。
「漆器」とは?漆器の材質・なりたち・代表的な種類

漆を使用した工芸技術は、遡ること縄文時代から始まり、その後日本では全国あらゆる地で様々な漆工芸品が作られ各地の郷土産業として発展してきました。
漆器は漆塗りを施した器のことで、器に使われる材質は木が中心ですが、竹や紙、麻布や紙、陶磁器や金属、樹脂などが使われることもあります。
漆器は全国各地で作られているため様々な種類がありますが、代表的な種類としては石川県の「輪島塗」、青森県の「津軽塗」、福島県の「会津塗」、富山県の「高岡漆器」などがあります。
漆器のお手入れ基本(洗い方や保管方法)

漆器は温度や湿度に左右されやすい「漆」を使用していますが、塗膜を傷つけないようにやさしく洗えば、特別なお手入れはさほど必要ありません。
洗い方は中性洗剤を水かぬるま湯に溶かし、やわらかいスポンジで洗うだけ。洗った後は水気を切ってから、布巾で表面についた水分を拭き取ります。
ちなみに高温・乾燥にさらされる食器洗浄機や乾燥機を使用して洗うと、漆器が傷みやすくなります。
漆は乾燥に弱く、湿度の高い環境で強くなる性質があります。自然乾燥させた後は食器棚にしまいっぱなしにせず「毎日使う」「毎日洗う」のが、何よりのお手入れです。ぜひ日々の食卓に漆器を取り入れて、漆器を水分にさらすようにしてみてください。
使いやすくメンテナンスしやすい、漆器を選ぶには?

漆器には蒔絵を施した豪華なものもありますが、蒔絵は使い込むほどに変色したりはげやすかったりするため、毎日使うなら装飾のないシンプルな漆塗りの食器がおすすめです。
また表面には使い続けるほどつやが増し、丈夫で扱いやすくなる「天然漆」を使用したものを。素地には割れにくく、漆の密着度が高い「木」を使用している漆器を選ぶと長持ちしやすくなります。
臭い・カビ・くもりが気になった時の「Q&A」
Q.「使い始めになんだか匂いがする……どうやったら匂いがとれる?」
A.漆器の使い始めは天然漆特有の匂いがすることがあります。匂いが気になる場合は、一晩、米のとぎ汁に器をつけおきしましょう。その後ぬるま湯で洗い、2~3日風通しを行えば匂いが抜けやすくなります。
Q.「カビが生えてしまった!お手入れはどうすれば?」
A.カビが生えてしまった場合は、まずはいつも通り中性洗剤とやわらかいスポンジで落ちるかどうか試してください。もしもとれない場合は、表面の漆がはげてカビの根が深く入り込んでいる恐れがあるため、表面の塗り直しが必要です。
Q.「長年使い続ける内につやがなくなった……漆器についたくもりはとれる?」
A.漆器は使いこむほどにつやが出てくる特徴がありますが、汚れがとりきれていない場合、逆に表面がくもることもあります。漆器のくもりはガラスの汚れを拭き取るように、息をふきかけ、やわらかい布で乾拭きすると落ちやすくなります。
また毎日さっと洗うだけで済ませているなら、少し丁寧に洗うだけでもくもりにくくなります。油のしみが原因のくもりなら、少量のオイルをしみこませた布で表面を磨いてみるのもおすすめです。
日々のお手入れやメンテナンスの「コツ」
手荒に扱わなければ長持ちする漆器ですが、高温にさらすと変色することもあります。熱湯や揚げものなど熱いものを入れる時は、使用前にぬるま湯にさらし、急激な温度変化を避けるのがおすすめです。
また漆は乾燥に弱い特徴があるため、どうしても長期間保管しなければならない時は、漆器とともに水を入れたコップを入れて保管するのがおすすめです。
さらに堅い陶磁器と重ねて食器棚へしまうと漆器が傷つきやすくなります。食器棚では漆器だけを保管するスペースを作ってしまうようにしましょう。
最後に
基本を知れば、意外と扱いやすいことがわかる「漆器」。扱いにくいからと敬遠することはありません。ただし「丈夫だから」と過信しすぎるのも禁物です。ぜひ漆器の材質と特徴・お手入れ方法の違いを知り、日々の暮らしに上手に漆器を取り入れてみてください。